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呼吸と神経系の関係 〜自律神経を整えるシンプルな方法〜

  • 執筆者の写真: 佐藤 尚輝
    佐藤 尚輝
  • 10月1日
  • 読了時間: 4分

「最近なんだか疲れやすい」「夜眠りが浅い」「集中力が続かない」——そんな悩みを抱えたことはありませんか?

実はその原因のひとつに、呼吸と神経系の関係が大きく関わっています。


私たちは1日におよそ2万回以上呼吸をしていますが、普段はその「質」について意識することはほとんどありません。ところが、呼吸の仕方ひとつで、心拍数や血圧、さらには脳の働きまで変わるということが、近年の研究で明らかになってきました。


今回は、呼吸と神経系のつながりについて、少し掘り下げてご紹介します。



○呼吸と自律神経のスイッチ


呼吸は、脳の中枢神経を通じて「自律神経系」に影響を与えます。自律神経には大きく分けて交感神経と副交感神経の2つがあり、このバランスが心と体の状態を決めています。


・交感神経優位(ストレス状態)

→呼吸が浅く速くなり、心拍数や血圧が上昇。いわゆる「Fight or Flight(闘争・逃走反応)」が働き、体を戦闘モードに切り替えます。


・副交感神経優位(リラックス状態)

→呼吸がゆったり深くなり、心拍数や血圧が下がります。これは「Rest and Digest(休養と消化)」の反応で、体の修復や消化吸収を助ける状態です。

つまり、呼吸をコントロールすることで、自分の体を「戦闘モード」にも「リラックスモード」にも切り替えることができるのです。



○呼吸を支配する神経の役割


私たちが呼吸をできるのは、横隔膜という大きな筋肉のおかげです。そして横隔膜を動かすのが横隔神経(Phrenic nerve)。この神経が働くことで、息を吸ったり吐いたりすることが可能になります。


さらに重要なのが**迷走神経(Vagus nerve)**です。迷走神経は副交感神経の要とも言える存在で、内臓と脳をつなぎ、体の状態を脳に伝えるセンサーのような働きをしています。実は迷走神経の約80%は「Afferent(求心性)=情報を脳に送る」役割を担っているのです。


言い換えれば、呼吸を整えることで迷走神経が刺激され、脳に「リラックスして大丈夫」という信号が送られるわけですね。



○呼吸と脳のパフォーマンス


呼吸は脳の働きにも直結します。例えば、過呼吸などで二酸化炭素濃度が下がると、血液の酸素供給が低下し、脳のサイズが一時的に約2%も縮むといわれています。これを**Hypocapnia(低二酸化炭素血症)**と呼びます。


その結果、

・集中力の低下

・記憶力の低下

・不安感やめまい

・過度なFight or Flight反応


といった不調が現れることがあります。

「呼吸が浅いだけでこんなに影響があるの?」と思うかもしれませんが、まさにその通りで、呼吸は脳のパフォーマンスを左右する大事な要素なのです。



○自律神経の理想的なバランス


では、交感神経と副交感神経、どちらが優位であればよいのでしょうか?


答えは「どちらか一方だけではなく、状況に応じてバランスよく切り替わること」です。

・常に交感神経が優位 → ストレス過多・不眠・血圧上昇

・常に副交感神経が優位 → やる気が出ない・活動性が下がる


理想はシーソーのようにバランスを保ち、必要な時にスイッチできる状態です。その鍵となるのが「呼吸」なのです。



○日常でできる呼吸の工夫


呼吸と神経系のつながりを知ったら、実際に活用してみましょう。例えば、

・ストレスを感じたら:深くゆっくりと腹式呼吸

→ 副交感神経が優位になり、落ち着きを取り戻せます。

・集中したい時:数回意識的に深呼吸してから取り組む

→ 脳への酸素供給が整い、パフォーマンスが向上します。

・寝る前:4秒吸う→7秒止める→8秒吐く「4-7-8呼吸法」

→ 自律神経がリラックスモードに切り替わり、入眠しやすくなります。



まとめ

呼吸は、単なる「空気の出し入れ」ではなく、心と体をつなぐ架け橋です。

速く浅い呼吸は体を戦闘モードに、ゆっくり深い呼吸は心を癒すモードに導いてくれます。


普段の生活の中で少しだけ呼吸を意識してみると、ストレスの軽減や睡眠の改善、集中力アップなど、思わぬ効果を実感できるはずです。


次回は「実践的な呼吸法」をご紹介していきます。ぜひ、自分の毎日に取り入れてみてください。


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